物流を制するものは、商流を制する。商流を制する者は小売りを制する。PARTⅡ ~INCOTERMS実践編~
2017/03/08
皆さんこんにちは。調子はどうですか?
極寒だった2月が終わり、もう3月。春の訪れを感じる今日この頃です。
寒暖の差が激しいですが、風邪などひかれてないでしょうか?
インフルエンザもまだまだ流行っているようなので、体調崩さぬようご自愛ください。
さて、前回はINCOTERMS の知識の必要性を訴えてまいりましたが、今回PARTⅡ は実践編ということで、実際にどのような貿易条件があるのか、具体的に解説していこうと思います。
そもそも、INCOTERMSて何?というところからもう一度簡単に説明しますね。
前回と重複しますが、INCOTERMSとは、国際商業会議所(International Chamber of Commerce 通称ICC)が取り決めた貿易条件に関する国際的な統一ルールです。
また、こんなことをいうと、小難しいなぁと思われるかたもいらっしゃると思いますね。
ようは、世界共通の貿易条件を定めておくことで、瞬時に相互の求めている取引条件を理解することができ、商慣習の違いやお国柄などが原因での誤認を防ぎ、スムーズに国境を越えての取引をすることができるという最大のメリットがあります。
例えば相互に言葉が通じなくとも、
「CIF US$100 OK?」 「OK! CIF US$100 」というだけで意思の疎通、貿易条件がどんな条件なのか瞬時に確認できてしまいます。
「CIF 価格100ドルでどうですか?」「CIF 価格100ドルで買いますよ!」てことに瞬時に理解できますよね?
ちなみにご存じのかたも大勢いらっしゃるとおもいますが、CIFというのはINCOTERMSの代表格の一つです。
このようにほぼアルファベット3文字で表現されます。日本で使用する代表格を下記にあげてみます。
大まかに2通りに分けることができます。
海上運賃が元払い(先払い)か着払いかです。
ちなみに最新のINCOTERMSはINCOTERMS2010です。
元払い(先払い)
CPT ・ CIP・ DAP (DDU)・ DDP・ CFR・ CIF
着払い
EXW FCA FOB
詳しくは上記の図表をクリックしてご覧ください。
前記のアルファベット3文字はそれぞれ、略語となっており、各条件ごとに責任(危険移転の分岐点、役割や費用)をどちらがどの程度カバーするのかが明記されています。
7年前の2010年に陸送も含めた複合輸送(コンテナ輸送)に対応した条件を加え更新されました。
しかしながら、以前として改定以前のINCOTERMSもメインとして使用されています。
商慣習として一般化定着しているのが、FOB CFR CIF DDP DAP(DDU) EXWなどです。
INCOTERMS2010は近年の海上コンテナ輸送と航空輸送、複合一貫輸送の一般化にともない、それに適合した条件となりました。
つまりは、FOB≒FCA, CFR≒CPT , CIF ≒CIP, で FCA 、CPT , CIPを使うと通な感じがします。しかし、すでに7年も経っているのに、定着化しているかというとそうではなく、FAC, CPT, CIPというと取引相手が知らない場合があります。
そういう意味ではまだまだ、FOB, CFR, CIFの方が一般的だと言えます。
それでは、具体的にどのような場面で、これらのINCOTERMSが決定していくのでしょうか?
まずは、着払い条件FOB/FCA , EXWから検証してみましょう。
①FOB とはFree On Board (本船甲板渡し)といい、船に貨物を載せた時点で責任が売手(輸出者)から買手(輸入者)に移行します。
②FCA Free Carrier (運送人渡し)といい、指定した保税地域に貨物を搬入した時点で(輸出通関は売手が行う)売手(輸出者)から買手(輸入者)に移行します。
③EXW Ex works (工場渡し)といい、売手は自らの工場おいて、輸出に適した荷姿(梱包)で買い手に手渡した時点で責任が移行します。(買い手が貨物を引取に来る)
上記に挙げた着払い条件は、海上輸送のイニシアティブがいずれも買い手(輸入者)にあるのがポイントです。
具体的には売手は船積みに関して、買手が指定してきた船会社(フォワーダー)にコンタクトをとり、その指定されたフォワーダーから提示されたシッピングスケジュールに従いブッキング(船腹予約)し、船積を行います。
つまり、売手主導で船積みを行うことが出来ません。
なぜならば、この場合買手が輸入地で船会社(フォワーダー)から輸入の海上輸送の見積をとり、輸入地側から輸出地のフォワーダーに海上運賃や使用する船やルート等を指示しているからです。
買手にとってのメリットは、
A.海上運賃を明確にできる。
B.船積みの(到着の)次期を明確にできる。
という点です。
売手にとってのメリットは、買い手の港までの海上運賃を気にしなくて良いので、責任負担が少なく面倒な手間を省くことができます。
特に、③のEXWは売手が貿易になれてない場合や、売手の商品に商品力があり、買い手がどうしてもその商品が欲しい場合など、買い手が売り手の敷地まで商品を取りに行くという条件です。この場合売手は、必要な梱包(輸出に適した梱包)と船積みに欠かせない書類の作成など最低限度の協力で事足ります。
これらは、いずれも買手(輸入者)側に貿易知識があり、貿易慣れしていなくてはなかなか対応が難しいと言えます。
しかしながら、逆に売手(輸出者)にとっては、さほど知識がなくとも、貿易慣れしなくとも容易な条件とも言い換えることができます。
買手(輸入者)にとってFOB/FCAにすることのメリットの具体例をあげてみましょう。
特に、中国から日本へ輸入するケースを検証していきましょう。
中国の貿易事情は特殊で特に海上輸送は、”裏側” ”裏事情”があります。
今からそれを暴露しちゃいます。
それはマイナスフレイト(マイナス運賃)です。
「マイナス運賃??」「どういうこと??」
通常は依頼者(荷送人)が運賃を支払ますよね?それって当たり前です。
だけど、中国では、依頼者(輸出者)に対して船会社から謝礼金としてキックバックがおこなわれることがあります。これが常習化していました。(最近徐々に減っては来てます。)ということは、売手に船積みをまかせていたケースでは、
海上運賃先払いCFR,CIFの条件で契約していても中国の場合、売手に海上運賃のキックバックがあるという、驚くべく、日本人の感覚では理解不能なことが起こっています。(日本では違法です。)
しかし、マイナス海上運賃という制度、船会社はどこから収入を得ているのでしょうか?運賃収入なしで、海上輸送できるはずがないですよね?
その秘密はなんと、「輸入地(日本側)から運賃に補填する費用を吸い上げているのです!!」
「えっ!??どういうこと!? 」
みなさん、もう一度ARRIVAL NOTICE (海上貨物到着案内)の料金表請求額をよーく見てください。
FAF, YAS, EBSという項目はないでしょうか?
「おぁっ!! ありました!! 」
そうですかありましたか。 FAF YAS EBSとはそもそもなんでしょう?なんの項目でしょう
これは、サーチャージと呼ばれるものです。みなさんも耳にしたことあるのではないでしょうか?
それぞれ、
FAF とはFuel Adjustment Factor 燃油サーチャージ
YAS とはYen Appreciation Surcharge 円高損失補てん料金
EBS とはEmergency Bunker Surcharge 緊急燃油高騰損失補填サーチャージ
という項目になっております。
しかしながら、みなさんこれらのサーチャージは本来CFR CIFなどの先払い(元払い)取引であるのならば、積地側で売手(輸出者)によって海上運賃と共に支払われるべき、料金なわけです。
それが輸入地で請求されるというのは通常ありえないことなのです。
それらが、貨物到着案内の請求書にTHC, DO FEE, DOC FEE, AFR, の他にFAF YAS EBSという項目で請求されていたならば言い方は悪いですが、ボったくられているようなものです。
船会社が中国でマイナス運賃としてキックバックしていたものを、日本側で吸い上げているということです。実質の海上運賃ですね。
こうした知識のない、善良な輸入者からいかにも、必須請求項目のような様相を呈してしれっと請求されてしまっているのです。
皆さん知っていましたか??
そのため、中国からの輸入を行っているかたにおすすめするのが、FOB /FCAでの取引条件です。
これらは輸入者が海上運賃を輸入地つまり日本で見積もりをとるので、このような不明慮な料金を支払うことを間逃れることができます。
皆さん、この中国輸入の裏事情ご存知でしたか??
さて、今回はこのあたりで、終了です。
次回はパート3 先払い(元払い)条件について検証していきます。
さあ皆さんINCOTERMSを学んで、苦手意識を払拭しましょう。
マーペンライ、モーマンタイ、ケンチャナヨ!